うさぎの強制給餌


食べない原因

ウサギが食欲をなくしてしまうのにはさまざまな原因が考えられます。
普通、食べない=お腹の具合が悪い、思われがちですが、
けっしてそれだけではなく、
もっと重篤な病気が原因の食欲不振も考えられますので、
もしもウサギが食欲を無くしているのならば、
すぐにでも動物病院に連れて行くことを強くお勧めいたします!

ウサギが食べない場合、はじめなければならないのが「強制給餌」です。
強制給餌は慣れればそれほど難しいものではなく行えます。

シロップ薬の飲ませ方

シロップ状の薬、または、水で溶いた粉薬のようなものの飲ませ方も、
強制給餌と同じ方法でできますので、
薬がうまく飲ませられない方もご参考になさってください。
薬の飲ませ方については別ページでご説明していますので「薬の飲ませ方」をご覧ください。


器具

強制給餌は
スポイトやシリンジ(注射器)使います。
内容としてドロドロとした流動食状態になりますのである程度の大きさがあるシリンジが使いやすいでしょう。
小さいシリンジや小さめなスポイトでは流動食が詰まってしまい思うようにできないですし、
ある程度の量を与えるのに何度も吸っては与え吸っては与えを繰り返さなくてはならなくなり、
与える人間側もウサギもストレスを感じてしまいます。

30ml のカテーテル用のシリンジ(注射器)
針は使いません。
中には約20mlの流動食が入っています。
シリンジは動物病院でお願いすれば分けていただけます。

シリンジは何回か洗って使うことはできますが、
しばらく使っているとゴムの部分が傷んでしまい使いにくくなってしまう場合があります。
使えなくなると捨てることになります。
使用済みのシリンジは家庭のゴミとして捨てるのではなく、
医療廃棄物として必ず動物病院で引き取っていただきましょう!


レシピ

強制給餌の内容はどのようなものが良いのか、
ある一例としてレシピをあげてみます。

レシピの一例

ニンジン カブ 小松菜 チンゲン菜 カリフラワー

これらの材料をミキサーにかけて作ります。

上の画像では栄養価の高めにするということで、

ニンジン、カブ、小松菜、チンゲン菜、カリフラワー

を使用しています。
ニンジンやカブのような根菜やカリフラワーのような野菜は、
ミキサーでなくてもおろし金でおろして流動食にすることもできます。
内容はウサギが食べれる野菜ならば基本的に何でもかまいません。
ウサギが食べる野菜についてはこちらをご覧ください。
「うさぎにとって健康的な食生活とは?」
中でもでご説明していますが、
栄養価や色々な効能を持っている野菜もあります。
それぞれの季節の旬の新鮮な野菜を中心に内容は変えていけば良いと思います。

これらの材料を料理用のミキサーでドロドロの流動食状態にします。
流動食が硬すぎてシリンジで吸い上げにくい場合には、
水を加えて少し柔らかくするように調節するとうまくいきます。
ミキサーが無い場合は、根菜類はおろし金でおろして流動食にします。
葉野菜はすり鉢を使い流動食にしますが、
やはりミキサーがあった方がうまく簡単に流動食ができあがります。
ミキサーは「ミルミキサー」と呼ばれるタイプのものがお勧めで、
ご家庭でも色々と使えるのでご用意なさっても便利かと思います。

症状によって内容を変える

食欲不振の原因や症状によっても内容を変える必要があります。
例えば胃腸の動きが完全にとまってしまっているような場合には、
強制給餌を行わない方が良い場合もありますし、

胃腸の動きが悪い場合には繊維質を控えた方が良い場合もあります。
その場合は、ミキサーで砕いたものをガーゼや茶漉しのようなものでさらに裏ごしすると良いでしょう。

例えば歯が悪くて治療後に歯の違和感から食べないとか、
直接胃腸の病気に関係無い場合の食欲不振のような状態なら繊維質も与えてもかまいません。

食欲不振の原因や状態などで強制給餌をしてはいけなかったり、
内容を変える必要がありますので、
強制給餌は必ず獣医師の指導を得てから行ってください!

フルーツ類について

リンゴなどフルーツ類を加えると、
甘みが出るので食べやすくなることもあるのですが、
胃腸の動きが悪く止まっているような状態でフルーツ類の糖分を入れてしまうと、
その糖分が発酵して胃腸内にガスを発生させてしまうこともあります。
ガスがたまるとお腹がポンポンに膨れてしまったりしてウサギが苦しがってしまうこともあります。
普段の食事やオヤツでもフルーツ類は与えない方が良いと思っていますが、
強制給餌をしなくてはならないような常態のときには、
糖分が多いフルーツ類は与えないようにした方が良いでしょう。

ニンジンは栄養価も高いですしβカロチンなどを含み免疫力強化にも良い野菜です。
しかしニンジンにはビタミンCを壊す酵素があり、
切ったりすりおろしたりして空気に触れることで酵素が働くようになります。
強い酸性の環境では働かないものなので、
胃酸の酸性度が強いウサギのお腹に入ってしまえば問題ないと思いますが、
強制給餌のようにミキサーで他の野菜と混ぜてしまうと他の野菜のビタミンCも破壊してしまいます。
ニンジン入りの流動食ばかりを続けるのも栄養面でバランスが悪くなりますし、
大過ぎにならないように工夫なさって与えてください。

ウサギ用流動食

ウサギ専用の流動食も処方食として販売されています。
ウサギ専用の流動食はいくつか種類がありますし、
ウサギ専用でなくても小動物用の流動食でも代用もできます。
通信販売でも買えますし動物病院で処方もしていただける場合もあります。
使用方法や、それぞれのウサギの体調に合っているかどうかもありますので
できれば動物病院で処方していただく方が良いでしょう。
そのまま水(ぬるま湯)で溶けば簡単に使えます。
もちろんそのような専用の流動食を使用しても良いですが、
生のビタミンミネラル類が含まれている、
手作りの野菜を使った流動食を与えることをお勧めします。

野菜を電子レンジでゆで野菜状態にしてしまう方法もあります。
それだと、野菜が柔らかくなるので流動食を作りやすくはなりますが、
熱によってせっかくのビタミン類が壊れてしまいますしあまりお勧めはできません。
やはり生の新鮮な野菜で作りましょう。
また流動食を作って、冷蔵庫で保存せずできたてを与えるようにしましょう。

ペレット(ラビットフード)を利用する流動食はお勧めできません

簡単な方法としてペレットを水と共にミキサーにかけドロドロの状態にしても利用できます。
また、ペレットならばミキサーをお持ちでなくても、
すり鉢や、水で溶けばそのまま流動食として使うことができますので、
ペレットを使用する方が一番簡単に思えます。

しかし、ペレットを砕いた流動食は
特に毛球症で胃腸内に毛の塊があるような場合、
その毛球にペレットのカスがからみつきベタベタした状態にしてより大きな毛球にしてしまうことがあります。
そうなると例えば毛球症ならより悪化させてしまうこともあり、
ペレットを使用した流動食はあまりお勧めできません。

市販の野菜ジュースもお勧めできません

強制給餌として市販の野菜ジュースを利用される方もいらっしゃいますが、
市販の野菜ジュースはフルーツで味付けをして甘くしてあったり、
レモンで味付けをしている場合が多いようです。
(塩分を添加しているものもあります)
レモンなどの柑橘系のフルーツに含まれるシトラールと言う成分は、
うさぎの血管内皮に障害を及ぼす作用があるそうです。
少量ならば問題ないとは思いますが、
特に強制給餌を行わなければならない状態にいるウサギには、
万が一のことも考えてお勧めしたくはありません。
同じく市販のリンゴジュースやパイナップルジュースも糖分が多いのでこちらもお勧めできません。

野菜をお勧めの理由

以上のような理由からも、強制給餌の内容としては野菜が一番お勧めできます。
さらに食欲不振時には脱水状態になっていることが多いですが、
90%が水分である野菜ならば水分補給にも適しています。
強制給餌だけでなく食欲不振からの回復期にも水分豊富な野菜はお勧めできます。
日頃から野菜を与えているとこのようなときにも役に立ちます。

野菜についてはこちらをご覧ください
「うさぎにとって健康的な食生活とは?」


回数 量

強制給餌だけで一日にウサギが必要としている栄養素を全て摂らせるには、
かなりの量と回数を行わなければならなくなります。
単なる目安としてですが単純に熱量だけの計算をしますと、
(ウサギの栄養は、熱量だけが重要ではありません)
上記のレシピでは一回分で20mlの流動食で約10キロカロリー程度になります。
と、言うことは、体重2キロ程度のウサギでは、
一日の必要熱量が80〜100キロカロリー程度と言う説もあるので、
それで計算すると上記の量を8回以上(8シリンジ分、と言いましょうか!?)
与えなくてはならなくなります。

とにかくお腹の中に食べ物を入れることが重要!

全く食べないウサギには
もちろんそのぐらいの量と回数を強制給餌をするのが理想的だと思います。
それよりもお腹の中を空にしない!と言うことが大切で、
とにかく何かを口の中、胃腸の中に食べ物を入れることがウサギにとって必要です。
食欲が無いときに強制給餌を1回行うとそれが呼び水のようになって、
その後食べれるようになることもよくあります。
なので、焦って何回も強制給餌をするのではなく、
長期間に渡って全く食べないのならば、多く食べさせる必要はでてきますが、
様子を見ながら、できることならばご家庭でも体重を量りながら回数は調節されると良いかと思います。


与え方

与え方には色々な方法が考えられます。
なるべくウサギにストレスをかけない方法がベストだと思われますが、
それ以上にウサギにとって危険の少ない方法を考えるようにしましょう!

ウサギの押さえ方(補体)の一例

一部の獣医師の間では強制給餌やシロップ状の薬の投薬の方法として、
膝の上にウサギをひっくり返し、仰向けに抱っこしての方法を推奨していますが、
その方法だと鼻腔や気管に流動食が入ってしまうことが考えられますし、
ウサギが嫌がって跳ね起きようとして脊髄を痛める可能性も否定できません。
(実際にそのような事故が起こっています)
それらの理由から仰向けで与える方法はお勧めできません。

またテーブルや椅子の上等、
高いところで行うとウサギが緊張するので大人しくなるのですが、
この方法も万が一飛び出したりして高いところからの落下事故を起こしてしまう可能性もあり、
やはりお勧めできません。

安全を考えてお勧めしたいのはこの方法です。

人間が正座をし、少し足を広げます。
股の間にウサギをはめ込むように固定して人間は覆い被さるようにします。
そうすることでウサギは前後左右に動く(逃げる)ことができなくなります。
上から首を押さえて首から顔あたりを包み込むようにします。

このような形はちょうど「マウンティング」のような形になり、
飼い主とウサギとの上下関係がきちんとできあがっている場合には、
それだけでウサギは観念して大人しくしてくれることもあります。

前歯と奥歯の間あたりにシリンジの先を挿し込みます。
ウサギは犬歯が無いので前歯と奥歯の間には隙間があり楽に入れることができます。
ちょうど唇の左右のはじあたりになります。

ウサギが飲み込むのを確認しながら、
少しずつ口の中にシリンジの中身を押し出します。
たくさんの量を押し込んでも口の端からこぼしてしまいますので、
慌てず、少しずつ、しかしあまり長い時間かからないように飲ませましょう!

強制給餌もなかなかおいしいね!
または、このように、前足を持ち上げる

顔の下から手を入れて前足を持ち上げてしまいます。
よりおとなしく強制給餌をさせてくれることがあります。
この方法の方がうまくいくかも知れません。

それでも暴れて難しい場合

だいたい上の方法で強制給餌はうまくできると思いますが、
ウサギが暴れてしまうので怖いとお感じになる場合はタオルを巻いてしまう方法もあります。

動けないんですけど・・・

食欲はあるのだけれど、モデルにされた足袋

このようにタオルでくるんでしまい上と同じように股の間にはさみこんでしまえば、
かなり安定した保体ができます。

タオルのくるみ方はまず床にタオルを敷いてその上にウサギを乗せます。
ぐるりと巻くようにし、首の後ろ側でタオルを交差させて手で押さえて止めます。
その場合、必ず後ろ足もタオルで巻いてしまうことです。
ウサギが暴れて問題になるのは背骨や足を痛めることで、
それを防ぐために必ず体全体後ろ足まで動けないように包むことです。
もちろんですが、あまり強く締め付けないことです!でも動けない程度に巻く。
これは慣れが必要かも知れません。

以上、一人でもできる強制給餌の方法ですが、
お二人でできる場合は、お一人が上のような方法で押さえて、
もう一方がシリンジを使い食べさせる方法もあります。
もちろんその方法の方がより安全と言えましょう!

もうひとつのコツとしては、
声をかけながら与える、と言うことです。
強制給餌をする人間側も緊張せずリラックスし、
ウサギにもリラックスしてもらうために優しく声をかけながら与えましょう!

色々な方法を試してみましたが、
この方法が一番安全だと思いますし、やりやすいと思います。

どの方法を取るにせよ、
飼い主である人間にとって「楽な方法」ではなく、
ウサギの身になって考えられてみられることが大切だと思います。
どのようにすることがウサギにとって安全でストレスを感じないのか?
先ず第一にウサギのことを考えて看護なさることが重要だと思います。


まとめ

強制給餌のやり方が分からない・・・
と、おっしゃる方がいらっしゃいます。
本来、強制給餌の方法は獣医さんに教えていただくものだと思いますが、
そのコツなどは自ら経験してみないとなかなか分かりにくいものだと思います。
画像をつけ今まで経験したことをご紹介することで、
少しでも強制給餌のやり方としてのお役に立てば幸いです。

また、「強制給餌ができないんです・・・」
とおっしゃる方もいらっしゃいますが、
「できない」のではなく「やらねばならない!」のです。
ウサギは、食欲を無くしたまま放っておくと、
4日食べないと死に至るとも言われています。
それに食べないと胃腸が動きがなかなか戻らずにより回復に時間がかかってしまうこともあります。
場合によっては、一ヶ月以上正常に戻らないことさえあります。
とにかく少しでもお腹の中に食べ物を入れることが重要です。

強制給餌を受け付けなくなったら

強制給餌を行っていて、
今までは嫌がったりしても何とか流動食を飲み込んでくれていたのに、
急に飲み込めなくなったりした場合はより注意が必要です。
口の中へ流動食を入れても吐き出すように口からダラダラとたれてしまい、
口の奥へ入っていかなかったり、
嫌がりながらも、口の中に流動食を押し込んでしまえば、
何とか食べていたのに急に食べれなくなってしまったような場合は、
食欲不振の原因になっているような状態や体調や病状が悪化していることが考えられます。
飲み込む力も失せている状態の可能性も考えられます。

ウサギは食欲が無いことで痩せ出すと加速度がついたように痩せていきます。
体重を計れば分かりますが数時間であっという間に体重が減ってしまうこともあります。
それほどウサギにとって「食べない」と言うことは重大なことなのです。
原因がどのようなものであれ、
ウサギが食べなくなっていると言うことはある意味では重症だと
思われてもかまわないと思います。
ウサギが食欲を無くしたら一刻も早く動物病院へ連れて行ってください!



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